本、建築、ときどき旅。
by fracoco-Y
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2008年 03月 16日 ( 1 )
祖母のこと(母方篇)
金曜日の明け方、電話が鳴った。

トイレに起き出した私に母が、
「おばあちゃん、亡くなったって。・・・・」

前日、携帯に母からのメール。
祖母が、多臓器不全で早ければあと一週間、ということだった。
私は、まだ存命のうちに祖母を見舞おうと、月曜日に札幌へ発つ
飛行機を手配した。

見舞いは凍結。

通夜は日曜日、告別式は月曜日という運びになった。

母の郷里は北海道。
夏休み、母に連れられて北海道へ行くのが恒例だった。
従姉妹や伯父伯母たち(もちろん祖母も)との親族旅行。
利尻礼文、知床、稚内、釧路。
東へ、北へ。
母は兄弟仲がよく、伯父伯母たちのそれぞれタイプは違えど
大らかでフランクな人柄。
年の近い従姉妹たち。
子供の頃の私は、年に一度の渡道を楽しみにしていて。

日曜日、父と札幌に発つ。同日姉と姪も渡札。
母は一足先、前日に札幌入り。
札幌駅北口に父と姉と(姪も)待ち合わせる。
タクシーを拾って会場へ。

行動の人であった。
針仕事は趣味を超えて仕事の域。
(通夜の席で、祖母が若き日に、和裁で教鞭を執っていたのを知った。
出生前に父親に死に別れ、女性も手に職を、との
意向があったのかも知れない。)
七五三の晴れ着も、ハタチの振袖も、祖母の手縫いだった。

庭仕事は、日本のターシャ・チューダーと言っては言いすぎか。
でも、私の子供の頃には畑を借りていて、とうもろこしを作っていたし、
梅がなると、紫蘇と一緒に甘酸っぱく漬けていたものだった。

町内会の活動に、赤十字のボランティア。
詩吟を嗜んでいて、師範の資格を得ていたのを知った。

1912年1月7日生まれ
(ドイツの指揮者ギュンター・ヴァントと偶然にも同年同月同日生まれ)
2008年3月7日5時15分、逝去。
享年96歳。

通夜の式場で、何年ぶりかで祖母と対面した。
眠るような安らかな表情だった。

掲げられた遺影の黒目勝ちな瞳。

いつも柔和で
「ありがとうさま。」「**さんが~へ行きなさって。」
祖母の口調に、私は、
(おばあちゃん、赤毛のアンに出てくるマシューみたいだよ。)
と思ったものだった。

見舞いを待たず、あっさり逝ってしまった。
温厚なうちにも芯のしっかりした人だったから、
逝くと決めたら、もう迷わなかったのかもしれない。

最後に言葉を交わしたのは、数年前、見舞いに行った折。
(そのとき私は腰を痛くしていて)「腰が痛くて。」
と言ったら、
「おばあちゃんは年だけれど、あんたはまだ若いのに。」
と可笑しがられた。そして、
「仕事もいいけど、結婚は?」
昔気質に念を押すのも忘れなかった。

グランドホテルに宿を取っていたが、
その晩は母や伯父伯母、従姉妹たちとともに、
会場に泊り込むことにした。
会場には、母のいとこたちも集っていた。
従姉妹たちと、久しぶりに近況を語り合った。

伯母(祖母の長女)の連れ合いである今年70になる伯父が、
「おかあさんにすまないから。」
と言ってほぼ夜通し起きているのだった。

何年か前から少しずつ内臓を悪くしていたし、
96歳は大往生、とは思う。
祖母の生まれた1912年は、明治天皇崩御の他、
清朝の滅亡、タイタニック号の沈没があった年。
それら歴史的事実を鑑みて、
(それは、おばあちゃんも年を取って亡くなるわけだわ。)
と思うのだった。
でも、想像以上に祖母が逝ってしまったことに打たれる。

肉親とは、無条件に愛情を注いでくれる相手であるから。

骨になった祖母は、一部がうっすらと桜色がかり、
一部は淡い翡翠色で、無垢で可憐だった。
右足のあった部分から、ごついワイヤーが5本も現れたのに
驚いた。
生まれも育ちも北海道であった祖母。
格段骨が脆かったわけでもないのに、
雪道で転ぶなどして、骨折したことが数回に及んだという。

ワイヤーは、雪国で暮らすことの厳しさを、
無言のうちに物語っているようだった。

遠方の親族もあるので、初七日の法要もその日のうちに。
喪主の伯父が
「おふくろを亡くす、というのは哀しいことではあるけれど、
こうして久しぶりの顔ぶれが集えたのが懐かしく、
これもおふくろからの最後の贈り物かな、と。・・・」

葬儀が済んで、私は何かに憑かれたように眠りに眠った。

私は32歳。
32年を1タームとして、それを3回繰り返すと祖母の年になる。
それを思うと、96年の生涯も案外あっという間なのかもしれなかった。

ー時間を大事にしなさい。
祖母が、そう語りかけているような気がする。
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by fracoco-Y | 2008-03-16 00:26 | diary