本、建築、ときどき旅。
by fracoco-Y
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珈琲哲学序説
図書館のほど近くに、旨いコーヒーを飲ませるP・・・という喫茶店がある。
自家製のケーキの数々も、見た目も美しく、美味なのである。

ふたたび、寺田寅彦について。
随筆集の中に「珈琲哲学序説」というのがあって、
珈琲好きの私には面白かった。

寺田は三十二の歳に、ベルリンに留学している。
ベルリンの下宿の女将は陸軍士官の未亡人だとかで、
ひどく威張ったばあさんであったのが、
コーヒーは、よいのを飲ませてくれたそうである。

ヨーロッパの朝食は、軽い。
そのため、午餐はボリュームがあるので、相当多量の昼食を腹へ収めた
あとでは、必然的に重い眠気が襲来する。

四時から再び始まる講義までの二、三時間を下宿に帰ろうとすれば、
そのうちの大半を交通に費やすことになるので、
著者は、いろいろの美術館を丹念に見物したり、
フリードリヒ街やライプツィヒ街のウィンドウを覗き込んで、
ベルリンの銀ブラをしてみたりして、それでも潰し切れない時間を
カフェーやコンディトライの大理石のテーブルの前に過ごしながら、
新聞をひろげて「ミット」や「オーネ」のコーヒーをちびちびなめながら、
淡い郷愁を瞞着するのが常習になったという。

帰朝してからは、銀座の風月へ行ってコーヒーをすするのが習慣になった。
当時は、まだコーヒーらしいコーヒーを飲ませる家が少なく、
店によると、よく考えないことにはコーヒーだか、紅茶だかわからないシロモノを
飲まされ、あるいはひょっとすると、汁粉のような味のするものを
飲まされることさえあったそうだ。

その頃の給仕人が、和服に角帯姿というのもおもしろい。

図書館へ行った帰りにP・・・へ行って、コーヒーとケーキをあつらえた。

出されたものをみて、何か変だな、と思うと、コーヒーに添えられているのが
ミルクではなくガムシロップである。

何故だか笑いだしたくなり、店の人を呼んでガムシロップをミルクに
替えてもらうかわりに、そのガムシロップを鞄にしのばせたので、あった。
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by fracoco-Y | 2007-04-29 21:32 | tea&coffee
ミルク・ポーション
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これを見ると、ヨーロッパを彷彿とする。

一見、何の変哲もない、コーヒーや紅茶に入れるポーションのミルク。

しかしこのポーション、日本ではクリームのところが、
英国やアイルランドのように、紅茶をよく飲む国では、
器がひとまわり大きくて、中のミルクも牛乳様なのだ。

喫茶店で紅茶を頼むと、場合によってはクリーム状の
ポーションが添えられていて、隔靴掻痒の感を味わうことがある。

…やっぱり紅茶にはミルクがほしい。と
軽い失望を覚えるのだが、このミルク・ポーション、
どうしてか日本で見掛けない。

だから、ロンドンの質実な学生寮みたいなホテルの部屋で、
牛乳のポーションと再会したときはむやみと懐かしかった。

旅愁を誘うこのポーション、日本でも店頭に並ばないかなぁ。
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by fracoco-Y | 2007-04-09 21:42 | tea&coffee
回送電車
昔、二年ばかり横浜のK…という街に住んでいたことがあった。

その二年は、社会人になった一年を含んでいて、
当時は毎日が午前様、といって過言ではない日々であったから
しばしば終電車に乗った。

私鉄K社の最終特急の到着を知らせるアナウンスは、どういうわけか
「まもなく深夜特急が到着します…」といったので、

学生時代に沢木耕太郎の「深夜特急」を読んだ私は、ほくそ笑んだ。
深夜特急、とは旅愁をそそられる。

ところで、堀江敏幸の「回送電車」を読みたいと思ったのは、
そのタイトルの語感もさることながら、

その中に「アエログラム」という一文が含まれているからだった。

4月8日、図書館で「回送電車」を借りてくると、
「アエログラム」から読み始める。

著者が昔、フランスへ本の注文を出すのにアエログラムを用いた話。

アエログラムとは、日本で言うところの航空書簡である。
一枚の紙にのりしろがついていて、
折り畳んで糊付けすると、そのまま投函できるようになっているのだった。
葉書より多くの文字が綴られるうえ、信書の秘密も保たれ、
ふつうの航空便より安価で、著者にとってはまさに、
一石二鳥だったのだ。

しかし、近年、フランスでアエログラムが廃止されたとの噂を聞き付け、
わざわざフランスの郵便局へ問い合わせると、
果たしてアエログラムは、もう取り扱わなくなった由、
著者は郵便局に「遺憾の意」を伝える…。

どこか、アナログの手巻き式腕時計みたいな雰囲気のある
堀江敏幸の「回送電車」
装丁もまたよろしく。

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by fracoco-Y | 2007-04-08 21:45 | book