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本、建築、ときどき旅。
by fracoco-Y
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おとうと
映画監督、市川崑が亡くなったとのニュースを見た。

市川崑といえば、幸田文原作の「おとうと」。
ー私の中では。
その昔、彼の作品とは知らずに、テレビで見た。

結核に倒れた弟と、弟を看病する姉の姿。
病床の弟と、彼に付き添う姉とが
紐で手を繋いで眠るシーンに
小学生の私はなぜか
(がーん)
と衝撃を受けた。

その後、原作を読んだけれど、
原作も、映画も、余韻の残るものだった。

高名な作家の父、母亡き後、嫁いできた継母。
継母は、後添えのコンプレックスと、リウマチの持病とで
なかなか家族に心を開くことが出来ず、信仰の世界に閉じこもっている。
父は、家庭に正面から向き合おうとしない。

家庭の温かさに飢えている多感な弟、碧郎。
姉のげんは、実際家らしく、そうしたやりづらさをやりすごしながら
日々を送っているが、
碧郎は寂しさから、やがて荒れた生活を送るようになり、
結核を患ってしまう。
げんは、自分の婚期を逸するのも承知の上で、弟の看病に
専心する・・・。

弟の要望で、人目も構わず高島田に髷を結い、病床に赴く姉。
鍋焼きを食べたがる弟ーしかし病篤く、熱いうどんをすするなどは
とてもできそうもない彼のために、それと気づかれないように、うどんを
一口大の長さに切っておいてやる姉。
しかし、哀しいかな、家庭の団欒から長らく遠ざかっていて、
病人の一人でする食事のわびしさまでは思い至れない姉。
姉さんもおあがりよ、と誘われて、戸惑ってしまう。

病状がいよいよいけなくなって、
やがて、昏睡状態に陥る弟の枕元で、
「・・・碧郎さん、碧郎さん!」と
涙に暮れる継母。


誰が悪い、というわけではなく
どうしてかすれ違ってしまう家族の哀しみを
感じたりした。

さて、市川崑は「東京オリンピック」を映画に撮ったのだそうな。
オリンピック映画、と聞いて連想するのは、ドイツの女性映画監督、
レニ・リーフェンシュタールのことだった。

ー見たい。
# by fracoco-Y | 2008-02-13 23:48 | cinema
秘密の庭
昔のtv番組と言えば、15年ばかり前に、
フジテレビで日曜日の早朝に放映していた、
ロンドンの、家庭のインテリアを取材した番組が好きだった。

彫刻家とか、スタイリストとか、インテリアにも個性の出そうななりわいの人が
多かったと思う。

インテリアのどこにポイントを置いているか。
宝物は何か。仕事について。

それでなくとも、内装に情熱を傾けると言われるヨーロッパのことである。

家により、モダンだったり、アンティークな風情だったり、いろいろで、
見ていて、楽しかった。

今も昔も、tv番組を録画する習性がないので、
番組はたまたま早起きしたときに限って見ていたが、
ロンドン市街のことゆえ、
ほとんどは集合住宅であった。

一つ、ことのほか印象に残っているのは、
ある集合住宅に、住人共用の庭があったことだった。
広々としていて、散歩にうってつけな、
秘密の庭があるというのは何ともうらやましかった。

ーあれ、再放送してくれないかしらん。
# by fracoco-Y | 2008-02-08 18:18 | tv
ピピロッティ・リスト展
ピピロッティ・リスト展_e0132381_1455970.jpg

からから、という名前の展覧会。

ええと、今を遡ること8年前、
東京都現代美術館で、彼女の作品を初めて見た。

水色シフォンのワンピースに赤いハイヒールで
顔には笑みを浮かべ、足取りも軽やかな女性が、
手には棒を持ち、路地を歩いている。
そして突如、にっこり笑ったまま、手に持った棒を振りかざして、
路上に停まっていたクルマの窓硝子を叩き割るのだ。

その印象が強烈だったので、
作品と共に、ピピロッティ・リストの名前が脳裏に焼き付いた。

ピピロッティ・リスト、日本初の個展@原美術館。

床板に開いた2センチほどの穴から見える、映像作品。
燃え盛る焔を背にして裸の女性が何事か訴えかけている。
(女性は実はリスト自身)

「膝ランプ」、という作品。
一台のランプとひとつの椅子。
椅子の座面に映像が投影されている。
その椅子に座ってみると、膝の上に映像が映るのだった。
日が当たって透き通る葉の葉脈や、茸の映像が膝の上に落ちるのを、
不思議な気分で眺める。

すると二、三の人が集まってきて、私の膝の上を見る。
何だか、自分も作品の一部になったかのような気持ちになる。

「部屋」という名の作品。
モニターが一台と、巨大な赤いソファがふたつ。
ソファの座面は床から70cmくらいあるので、靴を脱いでよじ登る。
ソファの上にはこれまた巨大なリモコンが。
十数のチャンネルはすべてリストの映像作品。
ソファをよじ登る自分のぶざまな姿が可笑しくもあり。

あの硝子割り作品も。
それは、「Ever is Over All」というのだった。

女性が手に持っているのは棒ではなくて、花で。
(どこまでもフェミニンなのだ)

婦人警官が後ろからやってきて、彼女を追い越していくが
見咎めもせず、ただにこやかに挨拶をかわすだけだ。
彼女は路上に列ぶ車を一台一台、硝子を割りつづける。

からから、という展覧会の名前は作家自身がつけたのだと。
乾いた感じでもあり、高笑いでもあり。

ピピロッティ・リスト、からから:2月11日まで。
# by fracoco-Y | 2008-01-27 17:58 | art
ハルピン
ハルピン、ってすてきだ。
NHKに、中国鉄道紀行という10分番組があって、
これが、世界の車窓から、の中国版みたいな感じ。

昨夜たまたま見たところ、舞台はハルピンだった。
モスクワかと見まごう街並。
ハルピン_e0132381_1592779.jpg


それもそのはず、ハルピンはロシアが建設した街だそうで。
店先に掲げられた漢字の看板が、東欧的風景にミスマッチなのも、
また悪くない。
旅人は中国語の達者な青年。
ハルピンの街でロシア・ショップやロシア料理店を訪れる。
夜景が美しい。

ハルピン_e0132381_1595316.jpg


ロシア料理店のオーナーは母がロシア人とのことで、
どういうわけか、達者な日本語を操った。

実は本業が建築士かつ彫刻家。
日本で10年の間、設計の仕事をしていたという。
故郷ハルピンのよさを、旅行客や若い人々に伝えたくて、帰国して店を開いた、と。
壷スープやピロシキがおいしそうな。

もし、中国に行くとしたら、北京より上海より、
ハルピンが見たい。
# by fracoco-Y | 2007-10-25 20:14 | tv
NHKアンコール「ロシア 建築と初恋に燃えた日々 黒川紀章」
昨晩、
世界わが心の旅アンコール
「ロシア 建築と初恋に燃えた日々 黒川紀章」
を見た。

このタイミング。追悼番組?

番組に気が付いたときには始まっていて、途中から。
7年前の映像らしい。

1958年、黒川紀章は世界建築学生会議に日本代表として出席すべく、
ソビエト連邦のレニングラード(現ロシア・サンクトペテルブルグ)を訪れた。

ロシア・アバンギャルドに傾倒していて、
コンスタンティン・メーリニコフの建築が見たかった黒川青年。
しかし、アバンギャルドの建築家は当局から弾圧を受けていて、
視察はかなわなかった。

ただ、この旅で見た住宅のプレハブ工場の強い印象が、
その後の、カプセルタワーへとつながって行った、と、
番組で黒川紀章は述懐する。

建築を志す、同世代の青年たちとの邂逅。

42年ぶりの再訪。
当時、親しくなった一人を訪ねる。
ソ連では、建築家として立っていくことが難しく、彼は、博物館の
レイアウトの仕事に身を転じていた。

58年。黒川青年は、会議で通訳を務めた
一人の女性に恋心を抱いた。

その女性の連絡先がわかり、自宅を訪ねて行く。
女性はセルビア人男性と結婚したものの、10年後に離婚。
今は一人でアパートメントに暮らしている。

ピアノの上の写真立て。
黒川と二人で映った褪色した写真。

「この写真・・・!これと同じ写真をずっと持っていますよ。」
・・と黒川紀章。

「この曲を覚えていますか?」
「僕が覚えているのは・・・二人で川のほとりを歩いていて・・」
「ああ!それはこの曲ね!」


「・・あのあと、何度も手紙を書いた。・・でも返事は来なかった。
レニングラードの友人に宛てて手紙を書きましたよ。貴女の消息を知らせて欲しい、って。」
「ノリアキ・・・あの当時は、手紙に返事を書くのはたいへん難しいことだったの。
・・あなたは知らないかもしれないけど・・・。」
(※旧ソ連では、外国人との交際は厳しく制限されていた。)

その女性、イザさんは、年齢を重ねているにもかかわらず、
どこか乙女のような可憐さをのこした女性だった。

真冬の、グレイッシュな、ロシアの風景。
穏やかな口調。

モスクワの建築大学を訪ねると、
教室の学生たちが拍手で迎える。
彼らの手にある模型は、どれもが、どこか、
ロシア・アバンギャルドを感じさせるもので。
感慨深げな黒川氏。

黒川紀章、ってそれほど好きではなかった。

でも、番組のなかの黒川紀章は、決して、わるくなかった。

レニングラードは、彼にとって、思い出の地だったのだ。
サンクトペテルブルグのコンペ、
無念だっただろうな・・。

そして、イザさんは、彼の訃報をどう受け止めただろう。
# by fracoco-Y | 2007-10-15 20:00 | tv