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本、建築、ときどき旅。
by fracoco-Y
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回送電車
昔、二年ばかり横浜のK…という街に住んでいたことがあった。

その二年は、社会人になった一年を含んでいて、
当時は毎日が午前様、といって過言ではない日々であったから
しばしば終電車に乗った。

私鉄K社の最終特急の到着を知らせるアナウンスは、どういうわけか
「まもなく深夜特急が到着します…」といったので、

学生時代に沢木耕太郎の「深夜特急」を読んだ私は、ほくそ笑んだ。
深夜特急、とは旅愁をそそられる。

ところで、堀江敏幸の「回送電車」を読みたいと思ったのは、
そのタイトルの語感もさることながら、

その中に「アエログラム」という一文が含まれているからだった。

4月8日、図書館で「回送電車」を借りてくると、
「アエログラム」から読み始める。

著者が昔、フランスへ本の注文を出すのにアエログラムを用いた話。

アエログラムとは、日本で言うところの航空書簡である。
一枚の紙にのりしろがついていて、
折り畳んで糊付けすると、そのまま投函できるようになっているのだった。
葉書より多くの文字が綴られるうえ、信書の秘密も保たれ、
ふつうの航空便より安価で、著者にとってはまさに、
一石二鳥だったのだ。

しかし、近年、フランスでアエログラムが廃止されたとの噂を聞き付け、
わざわざフランスの郵便局へ問い合わせると、
果たしてアエログラムは、もう取り扱わなくなった由、
著者は郵便局に「遺憾の意」を伝える…。

どこか、アナログの手巻き式腕時計みたいな雰囲気のある
堀江敏幸の「回送電車」
装丁もまたよろしく。

回送電車_e0132381_23222738.jpg

by fracoco-Y | 2007-04-08 21:45 | book
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